怪奇言語だ!!!さよなら幽霊ちゃんピックアップ集

皆さん!!!sugar.先生の迸る才気がバッチバチに凝縮されている「さよなら幽霊ちゃん」1巻を手にできましたか????????????????

(まだこの漫画を読んだことない人はここで一旦ストップ、今月1番の幸せになるチャンスだから「さよなら幽霊ちゃん」をゲトってからこの記事の続き読んでね)

 

さてさて。もう読みましたか?

「さよなら幽霊ちゃん」は4話で強烈な引きの強さを見せつけた事でTwitter上の読者からの注目が集まって、それ以降ずっと人気を集めている漫画なんですよ。「さよなら幽霊ちゃん」は作風と絵柄の組み合わせがこれしか考えられないという程マッチしていたりする事や、後で活用される布石の打ち方など、読者が「あっ、コレいい!!」と思うような部分が沢山ある作品ですが、それらについて網羅的な解説をするのは私が適任ではありません。

今回は「さよなら幽霊ちゃん」のれっきとした魅力の一つである、怪奇的言語表現のピックアップをします。

漫画って絵と言葉でできているので、漫画は「絵が綺麗」と評判になるのと同じように「言葉が好み/凄い」と評判になってもいいと思うんですよね。

今回の記事は、読んでくれた人が「さよなら幽霊ちゃんの言葉はれっきとしたメインディッシュでおいしい。ガッツリ平らげちゃいます」となってくれたら嬉しいな〜などと思いながら仕上げました。「さよなら幽霊ちゃん」の魅力的かつどこか面妖な言葉達に視線を合わせてみてください。

それではいってみましょう。

 

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てかそもそも何なのよ小テストって テストをコマ切れに小さくして与えようってトコにSっ気を感じるわ

(さよなら幽霊ちゃん1巻 P14より)


テストを子どもに野菜食わせるみたいに言ってる。

なお大人が野菜を細切れにし肉料理に混ぜて作ってる時の気持ちはSっ気ではない。

(これに限らずな話ではあるので恐縮ですが)なんというか珍妙な頭に残る言葉は、言ってる内容を受け手がイメージしようとして頭の中に像を結んだ時に初めて「ヤバイ」となるタイプと、むしろそんな事しなくてもテキストにしたままの状態で一番オイシイタイプの2つに大別できると考えてまして、テストをコマ切れに小さくするのは後者寄り(頭の中で像を結ぶ事はできるものの、その前のテキストの時点で既に旬があるので)だと思うのです。そしてわずか1話のうちにこれを繰り出してきたのを見て、言葉、とりわけテキストとしての強さの光る作品だなぁと認識させられたのでした。

 

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明日できる事は明日やり 現世でできない事は来世やる

(さよなら幽霊ちゃん1巻 P30より)

 

奇しくも神戸出身のラッパー、神門が10年前に残したパンチライン

「今日できなくって明日やれるか

現世でできなく来世やれるか」

(https://youtu.be/pEpPVVFEPQ8より)

を彷彿とさせる字面でありながらも、その意味内容はこの二つで完全にガップリ対立しています。それもそのはずで、この歌詞が収録された曲の名前は「なら、こう生きよう」。ゆうは幽霊なので、「なら、こう生きよう」における神門の主張と決して相容れることがないんですね。

 

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急に回想に入るのは譲り百歩ですけど何ですかその魔改造昔話

(さよなら幽霊ちゃん1巻 P92より)

 

譲り百歩、なんだこれは。慣用句を構成する「譲る」を名詞化させ、倒置を仕込んで誕生させた、楽しいリズムを持っている造語ですね。イントネーションは「いぶりがっこ」と同じでしょう。文字列をルービックキューブのように組み替えてグルーヴィーな単語を新たに産み出しているので、言葉を音として捉える感覚を鋭く持ってるんだな〜となります。もしかすると、sugar.先生に作詞をトライさせてみるとイイ感じのものが出来上がるやもしれませんね。

恩返しに何するつもりなんすか

(さよなら幽霊ちゃん1巻 P92より)

こちらも良い。鶴の恩返し(固有名詞)が恩返し(名詞)にまで分解され、手近にあるものっぽく「(ウチらの馴染みの)恩返しを一体どうするつもりだ」といった具合になっており、謎の距離の近さが乗っています。新たなニュアンスを付与させるために既存の言葉を削り取るのは、(私などがTwitterでダメ押しとばかりにやりがちな)ゴテゴテに修飾する語を付け足すアプローチと真逆なのが全くもってニクい。

 

ここまででピックアップ終了です。他にも「さよなら幽霊ちゃん」にはまだまだ怪しげな言葉達がこの時期のサツマイモみたく沢山埋まっているのでこの先は各位スコップ持参の上ゴッソリ掘り起こしてみましょう。

色々こういう事かな〜って内容を書いてきたのですが、忘れないで欲しいのは言葉の受け止め方は人それぞれな事です、のでこれ以外の理解をした人はその理解も大切に持ってて欲しいと思います。

あと今回の記事は「さよなら幽霊ちゃん」の言葉目がけて思いっきり前のめりで書いたのですが、先述した通りこの作品が言葉だけに留まらない魅力を持っている事は誰の目にも明白だと思います。まだ単行本1巻が発売されたばかりなので、「さよなら幽霊ちゃん」についていろんな角度のついた感想を読んでみたいですね。

それでは最後までお付き合いありがとうございました。